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男のリーダシップ 第97回 『「らしさ」を失うな』

男のリーダーシップ

2021.08.09

男のリーダシップ 第97回 『「らしさ」を失うな』

人材育成コンサルタント、守谷雄司氏による熱血マネジメント講座。今回のテーマは、「らしく、らしさに徹しろ」です。人には性別に関係なく周囲が期待している「らしくあれ」があるはずです。これを疎かにすると、周囲もがっかりしますし、自分の価値も下がるというものです。さて、あなたの職場の新入社員は「らしさ」を発揮して働いていますか?

directon & text by YUJI MORIYA illustration by CHINO A

私の言う「らしく」というのは、自分がこの世で果たすべき「役割」「義務」「責任」をきっちり果たせということなのであり、当たり前の話なのだ。要は、ごく当たり前に、政治家は政治家らしく、教員は教員らしく、役人は役人らしく、ビジネスマンはビジネスマンらしく、その与えられた役割や責任を自覚し、まっとうな仕事をせよ、ということだ。

森信三氏(哲学者)の言葉に、「時処位の自己限定」というのがある。『人は誰でも一つの時代に一つの処で一つの位(立場、役割)を得て、生きている』。つまり、〝人にはそれぞれ与えられた場がある。その場がたとえどんなにささやかであっても、その場を少しでも高める。そこに集う人々の心も高める〞という意味である。

ところで、君の職場の新入社員は数カ月間経過したわけだが、この“らしさ”を発揮しているだろうか?以下は、先輩・上司に可愛がられ、信用され、好感度人間として評価される基本の基本の条件である(これは、上司が思っていても言いにくいことなので、私が代弁したい)。

あるとき、入社1年目の研修で(フォローアップとして6月に実施)、営業マンが怖ろしい発言をした。「顧客なんて、徹底的にほめちぎればいいんですよ」と。どこかの講習会でにわか仕込みされた言葉を鵜呑みにしての発言だろうが、私はそれを聞いて背筋の寒くなる思いがしたし、逆にそんな程度のお世辞でお客がだまされるわけがないだろうと、彼の浅薄な解釈、それは違うぞと注意した。

ハッキリ言って、新人は逆立ちしたって、お客を手玉に取るような知識も技術も人生経験もない(と本人も周囲も、そう自覚すべきである)。かといって、10年選手の真似をして立て板に水を流すような話し方をしてみても様にならない。開き直って、新人の持ち味であるうぶなところを、ベテランにはない最大の魅力として大いに売り出してみるのである。「我々から見ていて、お客様がもっとも拒絶反応を示すときというのは、はっきりしている。らしくない話し方をするやつが出てきたときです」(講談師 一龍斎貞水「心を揺さぶる語り方」NHK出版)。

一龍斎さんは本書の中で、前座のくせに名人のようなしゃべり方をする者に対して、「らしくない」と一喝する。つまり、無理やりに今風のしゃべり方をする前座講談師が高座に出てくると、途端に場が白けるというのである。実力もついていないのに、口先だけで名人の真似をしても客にとっては鼻持ちならないという印象を持つということなのだ。 企業の新人も、組織の中では前座も前座である。前座には前座としてやるべき基本がある。新人は新人らしくしゃべっているのが一番いい。真打のようなしゃべり方、名人のようなしゃべり方は、中堅社員以上になってからすればいいのである。

新人に期待される「らしさ」とは、ビジネスパーソンとしての「基本」に精通し、仕事の「王道」に勇気を持って向き合うことである。基本を身に付けるということは、仕事のみならず、人格形成の根っこの部分も強化するということだ。

変革の時代である今だからこそ、きちんと足場を固めていくことが必要である。

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